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ごめんね。黙って出て行ってしまって。
怒ってる?怒ってるよね。本当に、ごめん。
でも、やっぱり、顔を見ながらだと、本当の理由、上手く話せそうにないので…手紙で、ごめん。今から、ちゃんと伝えます。
三年前の事故のこと、覚えてる?山道のトンネルを通っていたら急に壁が崩れて、大怪我をした時のこと。
あの時、あなた、言ったよね。よく二人とも助かったな、って。
本当はね…こんな話、信じられないかもしれないけど、あの時、本当は、あなたは死んでいた。完全に岩の下敷きになっていたの。血がいっぱい出て、いくら呼んでも返事もなくて、もし生きてたとしても、とても助からなかった。
わたしも足を岩に挟まれて、動けなかった。助けを呼ぶことも出来ない。もう夕方だったし、誰かが通りかかることもない。
どんどん辺りは暗くなって、寒くなっていって…あなたの指がどんどん冷たくなっていくの。
もうダメだと思った。二人とも、このまま死んでしまうんだと思ったわ。
その時よ。彼は突然現われた。
そして、わたしに言ったのよ。あなたの命を助けてやろうって。
三年後、わたしが彼のモノになるのと引き替えになら、あなたの命を助けると。
そう。彼は、人間じゃなかった。大きな岩だって、指先一つで消し去ってしまうことが出来る――彼はね、魔物だったの。
その、彼の、魔物の所有物。人間である事をやめて、永遠に彼のモノになる。それがどんなに恐ろしいことか、想像出来ないわけじゃなかった。
それでも、わたしは、うんと言った。
だってそうでしょう?そうしなければ、二人ともここで死んでしまう。だけど、わたしがうなずけば、うなずきさえすれば、まだ三年も一緒に過ごせるのよ!?
わたしは迷わなかったわ。
あなただって、同じ状況なら、迷わずうなずいたでしょう。それより他に、選択肢はないんだもの。
わたしは魔物と契約し、あなたを助けてもらった。
あなたと過ごしたこの三年間、わたしは本当に楽しかったわ。
お店も上手く行って、お客さんも増えたし、周りの人たちも本当にいい人ばっかりで、本当に怖いぐらい、幸せだった。世界中の誰よりも、わたしは幸せだった。
でも、だからこそ、あなたのプロポーズに応えられなくて、ごめんなさい。
断る理由が、分からなかったでしょうね。でも、もうすぐ、あなたの目の前から消えなければいけないわたしが、あなたの妻になることは出来ない。それよりも、一生あなたと一緒にいられる人を見つけて欲しいの。
悲しむのは分かってるけど…これ以上、あなたを辛い目に遭わせたくないから。
寝ている間に、そっといなくなるね。
明日が約束の三年目だから、あの人のところへ行きます。本当に今までありがとう…さよなら。
探さないでね。
そして、わたしのことは早く忘れて、新しい人を見つけてね。
ごめんね…本当に、ごめんね。