ありがとう。


 ありがとう。
 今まで、長い間、本当にありがとう。心の底から、感謝しています。
 わたし、相変わらず泣き虫で……やっぱり、顔を見ながらだと泣いてしまいそうなので、また手紙を書きます。

 あの日からちょうど、三年。
 今度はさすがに誰も助けてくれなくて、あなたが本当に天に召される日がやってきた。病気だとは言ってたけど、最期にあまり苦しそうな顔をしなかったから、正直ホッとしてます。
 息子さんたちもいい人で良かった。最初はまぁ……後妻がこんなに若くって、さすがにびっくりしてたみたいだけど、事情もよく分からないながらもわたしをお母さんなんて呼んでくれて、恥ずかしかったけど嬉しかったなぁ。
 二人ともよく出来た青年だったから、あなたの奥さんになった女性も、本当に素敵な人だったんだと思います。お店も繁盛してたし、わたしじゃあそこまで出来たかしら?なんてね。
 本当に……あなたが過ごしてきた人生を見せてもらって、それがいいもので、安心しました。
 あなたは別の女性と結婚したことをわたしに告げるのが辛そうだったけど、わたしはやっぱりそれで良かったと思うの。五十年なんていう長い時間を、無駄に費やしてなくて良かった。永遠の生命を持ってるカスタリアンならともかく、人間であるあなたにとっては五十年って長すぎる。
 それよりもその間、わたしのことを忘れなかった、その方に感謝します。自分を捨てたと恨まれていても、仕方がなかったのかもしれないのにね。
 あの日、あなたが来てくれなかったら、わたしは今もきっと闇の中。カスタリアンを苦しめ続けながら、自分ひとりが可哀相なんだと思って閉じこもっていたんでしょう。
 命をかけてあなたを助けたつもりが、結局最後には助けられたのね。

 それじゃ、今からカスタリアンの所へ戻ります。
 彼もわたしを待ってくれているから。
 あなたのことは忘れない。でも、だからって、彼を悲しませるようなことも、もう二度としません。
 大丈夫。
 二人で仲良く永劫を生きていきます。あなたのためにも、ね。
 あなただけを愛し切れなかった、弱いわたしだけど、それなのにわたしのことを最後まで好きでいてくれて、本当に、本当にありがとう。
 さよなら……ロイド。

レイチェル・グレーヴゼンド





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